僕は私は俺は 自分は

一人称を変えるだけで 自分が 自分とは違う何者かになったような錯覚をする


僕は学生です
私は小説家です
俺はバンドマンです

誰だお前 って口を挟むのが自分


そりゃあ 言葉を向ける対象にも依る

僕は私は俺は 自分は

上手く使い分ける


ただやっぱり

自分

こいつだけ 他の奴らから一歩離れた所に在るような

こいつだけ 人情味なく 空疎なような


こいつはまるで


のっぺらぼうだ

紙風船に飄々と描かれた のっぺらぼうだ


中身はスカスカ
表面はまっさら

能面のように 眉ひとつ動かさない



のっぺらぼうの自分に問う


お前さんが 最も
己を俯瞰し 己を理解している存在なのだろう?