お客様

今日の晩は和風の飲食店
天井から吊られた提灯が綺麗で感じの良い店だった
入り口から入って直ぐ右側のテーブル席
そこに母と腰掛けて注文を待つ
割と賑わってはいたが空席がちらほら見られた

自分たちの番が回って来た
店員さんは水と箸とお手拭きを其々2つずつ備えて
御注文はお決まりでしょうか?と問う
僕はチキン南蛮定食 母は黒酢チキン定食を頼んだ
実は今日の昼もチキン南蛮だった
久し振りに食べた為か朝を抜いた空腹故か
兎に角 美味しかった
もう一度食べたいと思った

暫く経つと客が徐々に増え始める
店員さんもせっせと注文に周る
一つ気になる事象が起きた
通路を挟んで反対側の席の老人夫婦が店員に小言を言ったらしい
私達あっちの人より先に頼んだんですけど と聞こえた
どうやら運ばれる料理の順番による諍いのようだ
店員さんは慌てたように すみませんでした と頭を下げる
夫の方が しっかりしてもらわないと困るよぉ と追撃
店員さんは再び頭を下げ 別の席へ運ぶはずだった料理をその夫婦の前へ据えた

僕はそんな他人事を見ていて少し違和感を覚えた

貴方達が早く注文したのかもね
だとしたら店側のミスなのかもね
でもなんだろうなんか引っかかる
お客様である優越感だろうか
それが鼻につくのだろうか
順番を一つ抜かされたら困るのだろうか
余計なことを言わず 大丈夫ですよ と付け加えるだけで良かったのではないだろうか



チキン南蛮は美味しかった
お会計2014円を聞き間違えて2016円を出した母
それを見て 二円大丈夫ですよ と言った店員さん
気づいて あっごめんなさい と言った母

僕にはそっちの方が良いお客さんに見えた