冬至

風呂場には既に柚子の香りが湯気に巻かれて漂っていた
鼻をつくような甘酸っぱい匂い
湿度を帯びた空気が冷え乾燥した肌を優しく撫でる

今日は冬至
だから柚子風呂にしよう
と母が言った
だから今日は柚子風呂だ
冬至と柚子にどのような関連性があるのか私は知らないのだけど


湯船に浸かりながらこんなことを考える
いやごめんなさい何も考えませんでした
何も考えずに体温とお湯の温度の差を確かめていた

今日の外は寒かった
冬至だからなのかは知らない
悴む指先が熱湯に焼かれる感覚
ほんとはそんなに熱くない

冬至冬至
冬至だからなんだというのだ
別に特別なことなんてない
特別なことなんてしなくても構わない

まあいいか
柚子風呂は意外と心地良かった