死香とサイレン

パトカーのサイレンが聞こえる

四方から 音響を重ねたように

不協和音が迫ってくる

不安を煽られる音だ

正義の味方が 不気味な音を照らし 悪を追う

 

悪は近くにいるのかな

 

声を漏らす刹那

悪は猛スピードで 首元の空気を 掻っ切っていった

 

言葉を見失う

息苦しい

空気中の酸素が 真空に吸い込まれていったような

 

前に敷かれた 横断歩道

もし 足を掛けていたなら

考えたくもない

芳ばしい

死の香りが まだ 漂っている

サイレンがアクセントに拍車をかける

 

正義が その痕を拭うように 横断歩道を跨いだ後

僕は横断歩道の脇を 恐る恐る 震える足で踏み過ぐ