絶体絶命 ただの絶望

前回の続き


逃げた先はお寺のような場所だった
そこには仲間と思われる者が複数人いた
楽しそうに談笑している

僕は慌てて彼らに伝える
奴らが来る と

奴ら ってのが何を指しているのかは自分でもわかってない
先程の奇妙な集団に関係があるのかもわかってない
兎に角 奴らが来る と伝えた

仲間達は笑いこけてる
奴らはここには来ないよ って茶化す
焦ってるのは僕だけらしい
僕は必死に訴える
彼らは必ずここに来ると

仲間の一人が呆れ顔で話し始める
奴らは 違う場所に襲来するよ
そこには強い味方が待ち構えてるから大丈夫だと
そう言うのだ


違う 奴らは必ずここに来る 確信がある
そんな僕の主張を真に受けてはくれない


寺の前方で物音がする
正面の襖をガラッと開いて外を見渡す
そこには 奴ら と呼んでた何かがいた
奴らは 真っ黒でモヤモヤしてて それでいて人の形をしていた

仲間は驚いて立ち尽くしている
ほら言っただろうが
僕は悔しさに歯軋りする
仲間に呼びかけて戦う支度をさせる
皆武器を手に取り 奴らと相対する

激しい戦いの幕開けだった
僕は必死に武器を振り回す
味方は各々独特な戦い方をしていて 結構強かった
しかし安心する暇などなく敵は絶えない
次々に湧いてくる敵に僕は飽き飽きしていた
身体よりも心が疲れてきた
大丈夫 こういう時はヒーローが助けに来てくれる
そう信じて 折れそうな心を保たせた


どれくらい時間が過ぎただろうか
前方の敵を全て殲滅することができた
ほっと胸を撫で下ろす
僕はもうヘトヘトだ
味方もだいぶ体力を擦らしてる様子だ
兎に角 終わった
そう思った刹那
後方から物音
忌々しい奴らが寺の中に入ってきた


あぁ ため息ため息
もう嫌だ もう嫌だ
僕は無我夢中に武器を振り回す
終わらない戦い もう嫌だ
援軍の到着を願う ヒーローの参上を願う

敵はどんどん増えていく
もう寺は四方から囲まれている
本当に八方塞がりだ
どうしようもない
絶体絶命
一筋の希望を求めて諍う
助けて 誰か助けて と もがく もがく

もう限界だった 限界だった
心が擦り減って 擦り減って
今 折れた
武器を下ろした
奴らが襲いかかってくる
仲間の阿鼻叫喚
助けようとしてくれる人達の辛そうな顔を見ながら
僕は 殺された


殺されて 夢から覚めた


ピンチには必ずヒーローがやってくる
あれは嘘だった
ヒーローは来なかった
救いのないただの悪夢 ただの絶望
僕が死んだ後の彼らの戦いが気になった
しかしあの様子じゃあみんな殺されただろうな と悲しくなる
僕が一番最初に心が折れたんだ
申し訳ない

嫌な夢だった 嫌な朝になる