そうやって言葉は増えていく

言葉は常に宙に浮いている
手が届くか届かぬかの狭間 揺ら揺らと

私はいつも爪先立ちで
空っぽの左手をぐっと伸ばしては一つ掴み取る
手に取ったそれは不思議な魔力を帯びた虹の果実
甘露な薫りを匂わせて人々を魅了する
私も魅せられた人間の1人であり それ無しでは生きられない
取っては食べ 取っては食べ
魔力が蓄積されてゆく悦楽に溺れる


言葉は常に宙に浮いている
頭上の空隙を揺蕩う 飄々と

私は精一杯背伸びをして
背丈に不相応な果実を手に取るのです
無理に手にした言葉には違和感という名の毒があります
読み返せば読み返すほど私の文にもその毒が滲んで見え
慌てて真っ白な修正液をかけるのです


背伸びをして 無理をして
でもね
そうやって言葉は増えていくんです

そうやって理解して消化して出てきた言葉は
紛れもなく私の言葉です

自信があります 私の言葉ですから