この街に住んでいる
お墓詣り
父と母と僕と
広島を離れる前に行っとこうという話
もっともなことだなと思った
墓場は相変わらずな様相
暮石の隣にはニッコリと笑うお地蔵さん
もう既に誰かが来た後だったのか
綺麗に清掃されて花が飾られている
なので少しだけ掃き掃除と暮石の水洗いを済ましてお詣りをする
目を閉じて 手を合わせて
線香の匂いが温かく身体を包み込むのを感じる
僕はもう直ぐ東京に行きますよ と
広島を一旦離れますよ と
彼方でも頑張りますよ と
其方もお元気で と
墓の中に入ったおじいちゃんへ
ここからは僕の住んでる街が見える
遠くに小さく
ちっぽけな街だなと改めて思う
帰り際には12時を報せる鐘が鳴った
街の中心から外縁へと幾重にも反響していく
全体を覆う響きが山に当たって木霊して
別に大した何かしらも無い
特に語れる何かしらも無いのだけど
なんだか懐かしさを掻き立てる音
きっとこんなものは都会には無い
まだもう少しだけ此処に居る
もう直ぐ行くのだけど
友との別れ
両親との別れ
住み慣れた居場所との別れ
全部 今一度ってもんだ
直ぐに戻ってくるさ 悲しくない 悲しくない
お別れ か