バス

木曜日はバスの窓辺でひとり、斜めに差し込む西陽を浴びながら帰路につく。春の日差しと言うには少し時化た温みで、時間の緩みを永遠に許されるような寛容さがあった。
車内は授業を終えた学生達が騒がせる。大抵は友達同士の世間話しなのだろう。これが面白いことに、人数が増えるのに比例して騒がしさが増すようだ。
僕はイヤホンを耳に当てて、外界を遮断する。ここから先は隔絶されたひとりの世界。音はイヤホンから入ってくる誰かの歌声。
目を瞑る。体が揺られる。眠気がやってくる。右の頬が火照る。終点が遠い。
起きた時、僕は此処に居るのか?何処か遠い国に飛んでしまいはしないか。やがて朧げな意識の下で夢を見る。