部屋の中に蚊が飛んでいた
日中窓は閉めているのに一体どこから入ってきたのか
僕だけの空間を我儘に飛び回る
今も耳元で囁くような羽音がうるさい
右足の甲が刺されてもいないのに勝手に痒くなってきて
気付けば首回りも痒い
たぶんこれも刺されてない
刺されてないんだろうけど痒い

空中で手拍子を打った
しかし外れた
蚊は余裕な表情を浮かべ僕の周りを迂回する
身体中の痒みが歯痒さに変わってしまいそう
近付いて 僕が気づくとすぐ遠くに退く
良い具合に距離感を保ってきやがる
こいつぁ手練れだ と思い諦める
血はやっただろう
もう出てってくれ
窓を開けて 逃げてくれと懇願する

やっと外に出ていくのを確認して窓を閉める
一安心だ
安堵の最中 また新たな刺客が忍び込んでいたのを僕は次の日に知る