走馬灯

ちょっと今日はよくわからないことを口走る
その自信がある
いまさっきおそろしいことがあって
自分でも混乱しながら言葉をならべてる
ぐちゃぐちゃに散逸した語彙をふるえる手で拾いながら
ひとつひとつ


それで
なにから説明したらいいんだろうか

そう
音楽を聴いていた
できるだけ暗い部屋のなかで

その音楽というのは
僕がすこし前から知っていたアーティストの新曲で
あまりにも歪で 奇怪な曲だった
どのジャンルにも属さないような不思議な曲だった
それを暗い部屋で聴く
ひとりで聴く

そのあいだ そのあと ずっと
催眠にかかったような 不思議な気分だった
おそろしさ 間違いなくこれは“畏怖”にちかい感情
まるで 神に触れてしまったかのような
禁忌を侵してしまったかのような

今はすこし落ち着いて言葉に現わせるが
直後はほんとうに言葉がでてこなくて
わからなさだけが胸に充満して
突然夜道を走り抜けたくなった

くらくらする
脳を直接鈍器でなぐられたような
その凶器のなまえはきっと ハイセンス
とてつもなく莫大な才能に揺らされる
僕が音楽家を志していたならば
間違いなく楽器をへし折り 身を投げていた

そうでなくてもみえる 走馬灯
きっとこれがそうなんだと思う
一度 二度 いや何度だろう
聴いている最中 何回しんだ? 何回ころされた?
息を忘れる
自分がなくなっていく
肋骨をなぞり心臓をさがす

あぁ あふれる
これは誇張だろうか
あまりにもへんな話だろうか
ぼくにもわからない
寝る前にもう一度聴く
こわいけど たしかめたくなる

おやすみ
ゆめのなかで