僕は彼が怖い 彼も僕が怖い
彼は翅を激しく震わせながら部屋の中を縦横無尽に翔け回る
僕は彼の発する重低音の響きが怖い
ブンブンと怪しげな擬音を掻き立てながら突進してくる
僕は反射的に身をくねらせて 手で空を払う
怖い
カーテンの上の端の方に留まった
お腹の黒と黄色の縞模様がヒクヒク動いてる
禍々しい色
腹から降った先っぽには尖った針が光ってる
怖い
窓は開けといた
どうにか退出願えないだろうかハチさんよ
彼は強張った眼差しで僕を睨みつける
僕は彼が振り回す巨大な平打ちが怖い
一発でも食らえばひとたまりもない
僕の翅は簡単にへし折られてしまうだろう
怖い
白いく柔らかい一帯に掴まり一休み
しかし気を抜いてはいけない
彼はまだ目を逸らさず睨みを利かせている
いつ 武器を手に僕を叩くか判らない
緊張の呼吸で腹部がうねる
反撃の尖塔に集中を怠るな
怖い
早く人間の領域から抜け出さないと
出口は何処だ