では また

朝に家を出て
電車に乗って
新幹線口へ

いつしか
通学用の電車は旅立ちを見送る長き友に
旅行用の新幹線は未熟な蛹を乗せた方舟に

意味合いがすっかり変わってしまっていて
寂しくなったり 哀しくなったり
流れる外の風景がもう懐かしい
通り過ぎる懐かしさが あるはずのない未練を想わせる



新幹線で遠くに行くのはもう慣れた
慣れたけど
いつも帰る家があったこと
誰かが待っていてくれること
それらが全部無くなって
そしたら人生で初めての旅に思えてきて
初めての恐ろしさが不安が 思い出されて
必ず来るらしき明日に不信感を抱く

朝起きて 自分以外誰も居ない部屋におはようして
突然何かに追われるように部屋を出て
裸足で外を走って
途中で空を飛んで
いつの間にやら家まで辿り着いて
馴染みのベッドに入り込んで眠りに就く
そんな夢をきっと見る

東京に着いて荷物を整理して
そんなことを考えていたらもう夜だ
眠くなってきた



写真
新幹線が動き出す直前の写真
では また
そう言った
友へ 家族へ 故郷へ