白船

新幹線の往き来にはもう慣れた
片道切符の落ち着かない触り心地にももう慣れた
それでも親しみがあるものとの別れには未だ慣れないものがある

なんなんだろうな 別れる瞬間のあの物哀しさ
父は最寄り駅の改札で
母は一号車の窓から
何度も何度も振り返り手を振った
最後の数瞬まで手を振った
僕も せめてもの笑顔で手を振った
ゆっくりと 次第に速く 加速度的に離れていく
またね故郷 心が呟く


新幹線が出るとすぐに 浪人をしていた友達からLINEがきた
大学合格したって
おめでとう
うれしい
でもごめん 俺はもう行くよ
さみしさはぜんぶ隠して 相手が腹を抱えて笑えるような戯けたメッセージを送る
そういうのは得意なんだ
昔からの付き合いの奴らの前では ピエロのままでいいよ
ずっと一緒に笑っていよう
その時間が俺も好きだから