昼空を編む

四限目体育
昼食を終えた僕等はグラウンドへ向かう
今日は最期の体育だ
楽しもう

緑の人工芝の上
この芝を踏むのも最期なのだろうか
暫し感傷
紛うことなき晴天
冬の陽射しは何かの終わりを見守ってくれているような温みを感じる
通り抜けるそよ風は肌寒いけど

僕はサッカーをした
久し振りだったもんだから身体が思ったように動いてくれない
頭の中でのイメージだけが先走って身体がついていかない
そんな過去との差異が可笑しかった

ハーフタイム
柔らかい緑芝の上で仰向けに寝転がる
体力も酷く落ちていた
はあはあと自らの慟哭
どくんどくんと自らの鼓動
はっきりと聴こえる
可笑しいな
あの頃は一番だったのになぁ と悔しそうに笑う

優しい風が僕の鼻の先を撫でる
運動後のあったまった身体には丁度良い冷たさだ
背伸びして深呼吸
少し落ち着く

遠く 遙か遠くを見ていた
あの大空の奥
あの蒼空の奥
何があるんだろう
宇宙が在るって教科書では読んだけど未だに信じられないや

青のキャンパスにもくもくと白
冬らしくない積乱雲があの夏の情景を描きなおしているように見える
雲と雲 その隙間に蒼空
僕の上だけ雲が配慮して避けてくれてるのかなと疑ってしまう
そんな昼の空
ぼうっと眺めてた
するとだ
雲から小さな白点が勢いよく飛び出した
点の正体は一機の飛行機
僕の真上を通り過ぎて行く
その光景に見惚れていた
眼に焼き付けておこうと思った

飛行機は機体の後部から糸雲を噴出しながら進む
間も無くして横の大きな雲の中に隠れてしまった
あとに残された一筋の飛行機雲
それが雲と雲を編んでいるような想像をして 形容し難い衝動を覚える
映画のようなドラマチックなワンシーンを見た気がした
まあそれを友達に伝えると笑われちゃったけど
僕はあの光景を忘れないよ
感情的で刺激的なドラマだ

昼空を編む

きっとこれはそういうタイトルだ