空白の日記

幽霊屋敷と呼ばれる場所への探検の途中
屋敷には鬱蒼とした雰囲気が漂う
シギシと軋む脆そうな木の床
暗い一本道を歩く

出合わせたのは不思議な気配
人気のない場所で燻っている謎の匂い
その源は廊下に落ちていた誰かの日記だと判った
古びた表紙に書かれたNo title
開くと真っさらなページだけが続く
しかしただの白紙ではない
何かの消し跡が残っている
そのように感じた私はその日記を持ち帰った

色々と調べてみる
火に炙ったり水に浸けたり
試しはしたが浮かぶ文字は一つもない
やはりただの白紙か と思うのだが
どうにも諦めきれない
これは私の勘としか言いようがない
何か隠されている気がするのだ

まだそれは本棚に納まっている
時折視線を導かれている気もするがきっと気のせいだ
作者名は不詳だが最後のページにサインらしきものが記してあった
ヨハク と書かれている
それが何を意味するのかは判らない
ヨハク という作者なのか
ただの余った空白を指すのか
だとすれば日記の内容が抜け落ちている?
まだ判らない
まだこの日記は空白のままだ