僕等は主人公

幼い頃、僕等は無敵の主人公だった。

誰もが世界の中心にいた。
ちっぽけな世界を我儘に謳歌していた。
怖いもの知らずで、小さな膝小僧には生傷がいつも絶えない。
夢を大声で叫んで、叶うと確信を抱いてた。

自覚なしに過ぎていく時間。
離れ離れになっていく友達。
体ばかりが大きくなり、気付けば進学、気付けば進学、もう就職だ。
お酒を飲めること、煙草を吸えること、そんなくだらないものだけが証拠となって嵩張って、いつしか僕等は大人になる。


大人になった僕等は次第に気付く。
僕等の世界が狭かったこと。
僕等は世界を動かす部品だったこと。
僕等は主人公ではなかったこと。

気付けば気付く程否定されていく過去が、まだ、辛うじて息をしているが、一思いに殺してやろうか。
そうすりゃ楽になるか。
過去に縋り付く己の浅ましさを嚇すことで、何かを死角に隠す。

弱さ。
僕等は弱い。
弱くなった。
幼き愚直さも、空を飛び回る夢も、坂道を駆け下りる勇気も、誰かを打ち負かす自信もない。
無敵な僕等は消えて無くなった。
残ったのは立派な理性と大きな体。
弱くなった僕等にはそれが弱さの象徴の様に思え、今日も脇役を演じている。